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 未来惑星ザルドス
(2021/11/26)
2001年へのアンチテーゼか?
 弾 射音
 1974年のSF映画。鬼才ジョン・ブアマンが監督の、まことにへんてこりんな作品である。

全体的に説明不足というか、説明をどうやら意図的に排除しているようで、日本での公開当時は冒頭に用語集が付加されたが、用語を説明されても理解されなかったのではないだろうか。私は公開前に原作の翻訳を読んだので、すんなりと理解できた。ちなみにそのとき私は中学三年生。ませたガキだった。

戦争か何かで人類がほぼ滅亡。人類は両極端に二分化される。エターナルズという、永生不死の人間と、奴隷としてこき使われるブルータルスと。エターナルズはボルテックスという楽園に住み、ブルータルスは荒廃した土地に住んでおり、しかもブルータルスのなかから選出されたエクスターミネイターによって人口調節のため殺戮されている。

しかしあるとき、エターナルズがブルータルスを使役するようになり、疑問を抱いたエクスターミネイターのゼッドは神としてブルータルスにあがめられているザルドスという石像にひそかに乗り込み、ボルテックスに侵入する。

そこで、メイとコンスエラという女性につかまり、心身を調査されるが、求めていた情報が意外に入手できない。とりあえず生かしておくことになり、フレンドという男性に預けられるが、フレンドは変わり者で、ゼッドにボルテックスの実情を見せる。そしてフレンドは罪に問われ、有罪になる。刑罰は加齢。一気に老人になってしまう。しかし、どうしても死ねない。

やがて、ゼッドをボルテックスに導いたアーサー・フレインというエターナルが復活、世界の真相と実情が明らかになり、ゼッドは仲間のエクスターミネイターたちを導いてボルテックスを急襲、エターナルズは全滅させられ、カップルとなったゼッドとコンスエラだけが生き残る。
 あらすじをこんなふうにまとめたが、これでも分かりづらいかもしれない。なにしろ、外連味たっぷりでシンボリックな映像ばかりが連続し、まともに筋を追っていないのである。

日本ではまるでヒットしなかったようだが、文学好きなフランスではヒットしたそうだ。なにしろ中三だったので、ストーリーは理解できたが、テーマはよくわからなかった。しかし、永遠の生などというものに反旗を翻し、永遠の生を実現してしまったヒトの悪意を粉砕、滅亡してしまうというコンセプトは理解できた。それに、当時もエターナルズとブルータルスの二極分化が時代を象徴していると言われたが、現代では当時よりはるかに、この映画のように人類は格差社会を生きている。

年を取ってすれっからしになってしまったいまとなっては、この映画がどうしても映像優先のハリボテのように見えてしまうのが悲しい。それでも、人類の性癖はどうしても悪い方へと突き進み、自分たちだけがよければそれで万事解決で、他者を思いやることがないというどうしようもない真実が胸に迫るのはたしか。

ちなみに、ショーン・コネリーが全編赤ふんどしいっちょうで登場。しかも女装する。彼にとっては、黒歴史だったのではないか。

それに、映画のコンセプトを気に入ったスタンリー・キューブリックは、『2001年宇宙の旅』を撮影したジェフリー・アンスワースを紹介している。そのため、映像は非常にきれい。不必要にきれい。しかし、映画の主張はまるで正反対。